表装ひとすじ30年
マイスターがつくる掛軸
表装とは?
表装(ひょうそう)とは、書や絵画に布や紙を張り、装飾を施して、掛軸や屏風などに仕立てること。その歴史は古く、平安時代に中国から伝来した技術とも言われ、大切な仏画などを保護し、装飾することからはじまったと言われている。室町時代には、寺院の床の間に飾っている掛軸を見た庶民の間でまねるようになり、茶の湯の流行も相まって表装文化が栄えていったそうだ。
昔と比べて床の間がある家も減り、表装を手がける業者も減っているのが現状だ。一方で、いまなお、書道家やお遍路さんのように、その丁寧な技術を必要としている人たちもいる。そこで今回は、全国にある就労支援施設のなかでも、唯一表装を手がけている「社会就労センターかもな」を訪ねた。
徳島市のシンボル的存在として親しまれている眉山の麓に、「社会就労センターかもな」はある。同じ敷地内にある障がい者支援施設「眉山園」は、1981年6月に徳島県ではじめての重度身体障がい者入所施設として開園し、その後に「社会就労センターかもな」がオープンした。現在の利用者は45名。名刺やパンフレットの印刷を行う印刷科、パンをつくるベーカリー科、自動車部品の組み立てなど委託の簡易作業をする軽作業科、フェルト人形やアクセサリーなどの雑貨をつくるレザークラフト科、そして、表装科がある。なかでも、印刷科と表装科は、40年前に眉山園が開園した当初からある作業科目だ。
表装科では、除草作業なども行うため、全員で10名の利用者が所属しているが、そのうちの3、4名が、大きなプレス機を使ったり、生地を寸分狂わずカットしたりと、きめ細やかな作業が多い表装に携わるのだという。
徳島障がい者マイスター・大林幸司さんのこと
表装をメインで手がける、この道30年という大ベテランの大林幸司さんと、表装科に勤務して23年という職員の日下英樹さんにお話を伺った。
大林さんは、表装に必要な7つの工程をすべて習得し、その優れた技術が認められ、2014年には“徳島県障がい者マイスター”に認定されたが、ご本人は「まだまだ素人です」と、とても謙虚。
大林さんと表装の出会いは、ご自身が養護学校に通っていたときの実習先として、眉山園を訪れたこと。大林さんが就労する前から、眉山園は表装事業を行っていたそうだが、直接職員さんから教わったことはないそうだ。ほかの利用者の方の作業する姿を見ながら、時に、疑問に思ったことを質問をしながら、何年もかけて表装のやりかたを習得してきた。隣で、職員の日下さんが「職員は、大林さんのように表装はできない。むしろ、利用者さんたちの方が技術が高く、職員が教えてもらうこともよくあるんです」と話す。
大林さんに表装についてこだわりを聞いてみると、「几帳面でなかったらいかん。こんなもんでいいわっていうのでは、納得がいかん。お客さんの大切な1点もんやけんな。納得したもんじゃないと」と答えてくれた。
この世でたったひとつのものを扱うのは、とても緊張するのではないかと思い、日下さんに質問すると、「最初は嫌でしたよ。失敗したらどうしよう?って。慣れてきたら不安もなくなったんで、慣れは大事やな」と。経験を重ねてくるうちに、だんだんとコツがつかめるものらしい。
日下さんから見た大林さんは、「きちんとしていないと気持ち悪いと思う人。まじめというか、こだわりがある人」また、大林さんは、日下さんとの関係性を、「冗談を言い合える間柄になっとんちゃうかな」と笑って答えてくれた。お互いを信頼し合い、“相棒”とも言える大林さんと日下さんの楽しいやりとりを見ていると、思わずこちらが微笑んでしまった。
かもなの表装について
「社会就労センターかもな」表装科でできるものは、主に3つ。
1つ目は、お遍路さんたちが四国88カ所を巡り、それぞれの寺院の札所で納経軸に御朱印をいただいてきたものや、御影札を、掛軸や屏風などに表装したもの。一般の表装業者さんと比べても良心的な価格で、丁寧に、そして優れた掛軸に仕立ててくれる。納経軸のサイズは変わらないので、まわりの生地の種類によって金額が決まってくるそう。
2つ目は、書道教室や絵画教室の展覧会などで展示される、書や絵を掛軸に表装すること。書や絵については、サイズや生地の種類、希望の色味などによって、条件が異なってくるので、実際のものを見てみないと金額を伝えることは難しいそう。まずは、現物を見てから。「社会就労センターかもな」まで訪れることができるなら、さまざまな種類の生地を見ながら決めることも可能。
3つ目は、紙を美しく張るという技術そのものを活かした、障子やふすまの張り替え。張り替え後は、気分もリフレッシュできるだろう。徳島市内や近郊でまとまった数が集まるようであれば、無料で引き取りにも来てくれる。(遠距離の場合は要相談)
障子・ふすまの張り替えに関するご依頼はこちらから >納経軸はもちろん、書や絵の表装をお願いしたいと思った方は、まず、下記のお問い合わせフォームへ。あなたのお問い合わせ内容やご希望に沿えるように「社会就労センターかもな」のみなさんが美しい表装を提案してくれるはず。
お受けできる表装のご依頼について
お遍路の四国八十八ヵ所の霊場巡拝にて、満願した御朱印掛け軸の表装から、書道をやっている方は、自信の”書”に対して表装を施すことも可能です。水墨画などのご自身で描いた画(絵)に対しての裏打ちのみの対応もおこなっております。
管理については、徹底しておこないますので安心してお預けください。作業についても手作業にて丁寧におこないます。
画の大きさ、厚さなどの状態や、仕上げ方法により、金額もかわってきますので、まずはお問い合わせください。
御朱印掛け軸については、ある程度の仕上げの型は決まっていますので以下料金をご参考にしてください。
料金一例
●線両面並金襴(軸先:金軸)
・価格:34,000円(税込)〜
●四国八十八ヶ所 特上角丸額
・価格:52,000円(税込)〜
- ・仕立て方法や、生地種類などをお選びすることも可能です。
- ・対象物の引き取りについては、取りにお伺いすることも可能です。
- ・引き取りの場合は、徳島県内・主要市町村周辺のみとなります。
- ・県外からのご依頼の場合は、実物での確認が難しいため、お電話にて詳細をお伺いさせていただいた後の受注となります。また、対象物をお送りいただく際の、納品時の輸送費については、別途送料がかかりますこと、あらかじめご了承ください。
お遍路が始まるここ、発心の地徳島にて表装のご依頼をお待ちしております。